誰も悪くないのに起きる「情報の持ち出し」

木村さん、聞いてください。うち最近すごく助かってるんですよ。

え?なにが?

現場がLINEグループ作ってくれて、利用者さんの様子を写真で送ったり、「〇〇さん体調良くありません」とか、すぐ共有できるんです。

ああ、それは便利だねぇ。

めちゃくちゃ便利です。正直、これなくなったら現場は困ると思います。

なるほど。…ところでそのLINEグループ、お仕事辞めた職員、ちゃんと抜けてる?

……えっ。多分…?

「抜けてるはず」が、一番危ない

施設長が自分で作ったグループなら把握しているかもしれません。でも実際は、

  • 現場スタッフが勝手に作った
  • 管理職は入っていない
  • 誰が参加しているか分からない

そんなLINEグループも少なくありません。そこに、退職した職員が残ったままになっていたらどうでしょうか。利用者の写真、体調の変化、ご家族とのやり取り、個人連絡への申し送り。それらが、退職後も個人のスマートフォンに届き続けている可能性があります。

POINT

情報漏えいは悪意のある人だけが起こすものではありません。
「退職者がグループに残っていた」
それだけで漏洩してしまうケースもあります。

現場の人たちだけのグループもあるから、全部は把握してないなぁ…。でも…退職したら普通、自分で抜けますよね?

そうだねぇ。でも抜け忘れる人も結構いるんだよね。単純にこれまでは使う側だったのに、抜ける方法がわからなくて放置しちゃってたり。

あぁ………。

うちも昔、退職したスタッフから電話が来たんだよね。「まだLINE通知が届くので、退会させてもらえますか?」って。あの瞬間、血の気が引いたよ。

そ、それって……。

4ヶ月間、利用者さんの情報が、その人のスマホに届き続けてた。

うわぁ…!情報漏えい…!

悪意がなくても、リスクは消えません。

この元職員は親切だったから連絡をくれました。ですが、もし何も言わなかったら。もし退職時にトラブルがあった職員だったら。もしスマートフォンを紛失していたら。法人は、その情報がどこまで残っているのか把握できません。そして個人デバイスは、法人側から遠隔で削除したり、利用停止にしたりすることもできません。

POINT

LINEが有害なのではありません。
「法人が管理できない状態」で業務利用されていることが、本当のリスクです。

退職者だけじゃない。日常に潜むもう一つの落とし穴

いや〜…退職者の話は怖いですね。

そうなんだよ。でもね、退職者より身近なところにもリスクはあるんだよ。

身近なところ?

うん。例えば……誤送信。

あ〜……。

LINEって、仕事でもプライベートでも同じアプリを使うでしょ。
だから、送り先を間違える可能性はどうしてもあるじゃない?

僕も友達に子どもの写真送ろうとして、職場の人に送っちゃったことあります。

その程度なら笑い話で済むけどね。でも、逆の場合は……。

逆……というと……。

利用者さんの写真を、間違えてプライベートのグループに送ってしまったら…。

それは……笑えないですね。

便利だからこそ、起きる

個人LINEは、職員にとって非常に使い慣れたツールです。
だからこそ、

  • 操作に慣れている
  • すぐ送れる
  • 写真も簡単に共有できる

というメリットがあります。
一方で、仕事とプライベートの情報が同じ場所に存在するという特徴もあります。
便利だからこそ、仕事とプライベートの境目が曖昧になりやすい。
そこに、個人LINEを業務利用する難しさがあります。

POINT

個人LINEは便利な一方で、仕事とプライベートの情報が同じ場所に存在します。
その境目が曖昧になること自体が、情報漏えいのリスクにつながります。

休みの日までLINEが鳴る。便利さの裏にある「隠れ残業」

リスクはありますけど、でもやっぱり便利なんですよね。
うちはシフト調整なんかもLINEでやってて。

急に休みが出たときとか?

そうそう。「明日、入れる人いませんか?」ってグループに送れば、誰かが「私、入れます」って返してくれるんで。

あぁ、それは助かるよね。電話で一人ひとり確認するより、ずっと早いし。

そうなんですよ!現場としては本当に助かってて。

ちなみに、そのグループって休日の職員も入ってるよね?

そりゃそうですよ。グループLINEなんで。

じゃあ、例えば休みの日に「明日、入れる人いませんか?」って通知が来たら?

まあ……見ますよね。

で、「入れます」って返せる人は返す。

はい。

……それって、職員からしたら「仕事」じゃないのかな?

え?

いや、もちろん「LINEが来ただけで残業」という話じゃないよ。
でも、休みの日に業務の連絡が来て、それを確認して、返信してるわけでしょ?

……言われてみれば、そうですね。

送る側は「ちょっと聞いただけ」でも、受け取る側は「返信しなきゃ」って思うこともあるからねぇ。

あぁ……確かに。「休みだから見なくていいよ」とは言ってても、通知が来たら気になりますもんね。

そうなんだよ。だから便利なツールほど、「いつ、誰が、どこまで対応するのか」を決めておくことが大事なんだよね。

情報管理だけじゃなくて、職員の働き方にも関わってくるのか……。

その「ちょっとした返信」も、仕事かもしれない

休日の職員に業務連絡を送り、返信や対応を求める状態が続くと、「隠れ残業」につながる可能性があります。
たとえば、

  • 休日にシフト調整の連絡が届く
  • 「誰か代わりに入れませんか?」と呼びかけられる
  • 職員が返信する
  • その後、勤務時間や引き継ぎについてやり取りする

こうしたやり取りが日常的になっている場合、単なる「連絡」として片付けられないケースもあります。

もちろん、LINEで連絡したから、それだけで直ちに労働時間になるという話ではありません。
重要なのは、法人として
「休日の職員にどこまで対応を求めるのか」
「LINEでの業務連絡をどう扱うのか」
を決めているかどうかです。

POINT

「現場が自主的にLINEを使っている」からといって、法人の責任がなくなるわけではありません。
勤務時間外の連絡や対応についても、法人としてルールを決めておくことが大切です。

「現場が勝手にやっていた」では、済まないかもしれない

でも木村さん、ここまで聞いて思ったんですけど……。

うん?

うちのLINEグループって、現場の職員が自主的に作ったものなんですよ。
僕が「LINEで情報共有しよう」って指示したわけじゃない。

うん。

だったら、何か問題が起きても「現場が勝手にやっていたことです」って……。

言いたくなるよねぇ。気持ちはわかる。
でも、そこが経営側として気をつけないといけないところなんだよ。

え?

「知らなかった」「指示していなかった」だけでは、法人として十分な管理をしていたことにはならないからね。

……「把握していなかったこと」自体が問題になる?

そういうこと。
だから大事なのは、現場を監視することじゃなくて、法人として適切に管理できる状態をつくっておくことなんだよね。

……経営者が考えるべきなのは、そっちなんですね。

問われるのは「事故を起こした人」だけではない

情報漏えいなどの問題が起きたとき、問われるのは「誰が送ったのか」だけではありません。
法人として、どのような情報を扱い、誰がアクセスでき、どのようなルールや仕組みで管理していたのか。
こうした管理体制そのものが問われる可能性があります。

だからこそ重要なのは、現場の行動を細かく監視することではなく、現場が安全に仕事をできる環境を、法人側があらかじめ用意しておくことです。

POINT

「知らなかった」「現場が自主的にやっていた」では、法人の管理責任をなくすことはできません。
事故が起きてから対応するのではなく、事故が起きにくい仕組みをあらかじめ整えておくことが、経営側に求められます。

じゃあ、LINE禁止にすればいい?

なるほど……。法人としてちゃんと管理しないといけないのは分かりました。

うん。

じゃあ、明日から「LINE禁止!」って言えばいいんですか?

いやいや、それが一番やっちゃいけないんだよ(笑)。

でも今までの話を聞いたら、やっぱり危ないんじゃないかって…。

でもそれじゃLINEでできていたことを、ただ「禁止」するだけでしょ?

まあ……そうですね。

急なシフト調整も、写真の共有も、ちょっとした申し送りも。
それを全部なくしたら、現場は困るよね。そうすると、どうなると思う?

え?まぁ……別の方法を探すしかないですよね。

そうだよね。でも場合によっては「見つからないようにLINEを使い続ける」ことだってある。

あぁ……。一度覚えた便利さからは、なかなか離れられないですからね。

まぁねぇ…。そうなったら、今までより状況が分からなくなるだけなんだよね。

じゃあ、どうすればいいんですか?

「LINEをやめさせる」んじゃなくて、LINEの代わりになる、安全で使いやすい場所を法人側で用意するんだよ。

安全で、使いやすい場所…?

うん。現場が「こっちの方が便利じゃん」って思える仕組みを用意して、そこに移ってもらう。

なるほど。「使うな」じゃなくて、「こっちを使おう」にするわけですね。

そういうこと。

必要なのは「禁止」ではなく「法人公認の場所」

LINEを使っている職員の多くは、情報を漏らそうとしているわけではありません。
「早く伝えたい」
「写真をすぐ確認してほしい」
「急な欠勤をなんとかしたい」
そんな現場の困りごとを解決するために、一番身近で使いやすいLINEを選んでいるだけです。

だからこそ、単純に「LINE禁止」とするだけでは、根本的な解決にはなりません。
必要なのは、LINEで行っていた情報共有を、法人が管理できる場所へ移すこと。

例えば、

  • 法人向けのビジネスチャット
  • 介護事業者向けのコミュニケーションツール
  • 法人が管理できる共有システム

など、現場の使い方に合った仕組みを検討します。

大切なのは、「安全だから使ってください」と押しつけることではありません。
現場にとっても「今までより使いやすい」と思える環境を整えること。
そうすることで、現場の便利さを失わずに、法人としての情報管理も両立しやすくなります。

POINT

LINEを禁止するだけでは、問題は解決しません。
大切なのは、現場がこれまでLINEで行っていた情報共有を、法人が管理できる「安全で使いやすい場所」へ移すことです。

まずは「誰の情報なのか」をはっきりさせる

なるほど……。LINEを禁止するんじゃなくて、法人が管理できる場所に移すんですね。
でも、「法人が管理できる」って、具体的にはどういう状態なんですか?

例えば、職員が退職したときに、その人のアカウントを法人側で停止できること。

あぁ、それなら退職したあとも情報を見られる心配が減りますね。

そう。今のLINEだと、職員が自分のスマホで使っているから、退職したあとも過去の写真やトークがその人の端末に残る可能性があるよね。

ですね。法人の側から消せないし。

そう。だから、業務で扱う情報は「個人のスマホに置いておくもの」ではなく、「法人が管理するもの」に変えていく必要があるんだよ。

「誰が持っているか」じゃなくて、「法人が管理できるか」が大事なんですね。

情報の「所有権」を個人から法人へ

法人が管理できるコミュニケーションツールを導入すると、職員ごとにアカウントを発行し、必要に応じて管理者側から利用停止・削除などを行えるようになります。
例えば、職員が退職した場合も、

  • アカウントを停止する
  • アクセス権限を変更する
  • 必要に応じて過去の情報へのアクセスを制限する

といった対応が可能になります。

一方、個人のLINEやスマートフォンに業務情報が残っている状態では、法人側でその情報を完全に把握・管理することが難しくなります。
大切なのは、業務で扱う情報を「個人が持っている状態」から「法人が管理できる状態」へ変えること。
これが、情報管理を見直す第一歩です。

POINT

業務で扱う情報は、「誰のスマホに入っているか」ではなく「法人が管理できる状態か」を基準に考えましょう。
職員の退職や異動があっても、法人側でアカウントやアクセス権限を管理できる仕組みを整えることが重要です。

それでも「私物スマホを使う」なら、ルールを決める

法人が管理できるツールに移すのが大事なのは分かりました。
でも、いきなり新しいシステムを入れるのって、なかなか大変ですよね。

そうだね。予算のこともあるし、現場に新しいツールを覚えてもらう必要もあるし。

じゃあ、しばらくは今まで通り私物のスマホを使うしかない場合は…

その場合は、少なくとも「私物スマホを業務で使う場合のルール」を決めておいた方がいいね。

ルール、ですか?

うん。
「私物スマホで業務情報を扱っていいのか」
「扱うなら、どんな情報までOKなのか」
「写真を撮ったら、いつ削除するのか」
「退職するときはどうするのか」
そういうことを、あらかじめ決めておく。

「使うな」でも「好きに使って」でもなく、使うなら使うでルールを決めなきゃなんですね。

そういうこと。何も決まっていない状態が、一番危ないからね。

私物スマホを使うなら、「なんとなく」をなくす

法人が端末や専用ツールを用意することが難しい場合、私物スマートフォンを業務に利用するBYOD(Bring Your Own Device)という方法もあります。
ただし、重要なのは「私物スマホを使っていい」とするだけではありません。
例えば、

  • どのような業務情報を扱ってよいか
  • 写真やデータをどこに保存するか
  • 業務終了後や一定期間経過後にデータを削除するか
  • 紛失・盗難があった場合にどう対応するか
  • 退職時にどのような対応を行うか

といったルールを、法人として明確にしておくことが大切です。

「現場では昔からこうしている」
「みんな分かっているから大丈夫」
といった暗黙のルールに頼らないことがポイントです。
万が一問題が起きたときにも、法人としてどのようなルールを定め、どのように運用していたのかを説明できる状態にしておきましょう。

POINT

私物スマホを業務で使う場合も、「現場に任せる」のではなく、法人としてルールを決めておくことが大切です。
すぐに専用ツールを導入できない場合でも、まずは「何を・どこまで・どう扱うのか」を明文化するところから始められます。

そもそも、うちの情報ってどこにある?

私物スマホを使うならルールを決めるのが大事なのは分かりました。
でも……ルールを作るにしても、まず何を管理すればいいのか分かってないといけないですよね?

そうだねぇ。だから、いきなりツールを入れたりルールを作ったりする前に、まずは「うちの施設の情報って、今どこにあるんだろう?」って確認してみるといいよ。

情報って……?

例えば、利用者さんの写真はどこに保存されてる?申し送りは? 職員同士の連絡は? ご家族とのやり取りは?

うーん……。写真は職員のスマホにあるかもしれないし、申し送りは記録ソフト。連絡はLINE……。

ほら。

……結構バラバラですね。

そうなんだよ。どこにあるか分からない情報は、そもそも管理することもできないからね。

確かに……。

だからまずは、「誰が・どこで・どんな情報を持っているのか」を一度洗い出してみる。

それなら、今日からでもできますね。

そう。大がかりなシステム導入より先に、まずは自分たちの「情報の出口」を知ることから始めればいいんだよ。

まずは「情報の出口」を見える化する

「どこにあるか分からない」情報は、法人として管理することもできません。
職員個人のスマートフォンやLINEなど、法人が把握・管理できない場所に情報が散らばっていくと、少しずつ「情報のブラックボックス」ができてしまいます。
だからこそ、まずは「誰が・どこで・どんな情報を持っているのか」を洗い出すことが大切です。
例えば、

情報 どこで管理している? 誰がアクセスできる?
利用者の写真 職員のスマートフォン? ?
日々の申し送り 介護記録ソフト・LINE? ?
シフト調整 LINE・電話? ?
ご家族との連絡 電話・メール・LINE? ?

こうして書き出してみると、「法人が把握できていない情報が意外と多い」ことに気づくかもしれません。
大切なのは、最初から完璧な管理体制をつくることではありません。
まずは、「今、どこに情報があるのか」を知ること。
そこから、法人として管理すべき情報や、見直すべき運用が見えてきます。

POINT

情報管理の第一歩は、「何を、誰が、どこで管理しているのか」を把握すること。
個人のスマートフォンやLINEなど、法人から見えなくなっている「情報の出口」を一度洗い出してみましょう。

あなたの法人は「情報のブラックボックス」を抱えていませんか?

ここまで読んで、「うちの施設は大丈夫かな?」
と思った方は、まず現在の情報管理の状態を確認してみてください。
以下の項目に、一つでも当てはまるものはありませんか?

  • 現場の指示出しや写真共有に、個人のLINEグループを使っている
  • 退職したスタッフのスマートフォンに、当時の情報が残っていないか分からない
  • 職員が業務で使っているLINEや私物スマホの利用状況を、法人が把握できていない
  • 誰がどの情報にアクセスできるのか、法人として把握できていない
  • 情報管理について、法人として明確なルールを定めていない

一つでも当てはまる場合、「今は問題が起きていない」だけで、情報管理に見直しの余地があるかもしれません。
大切なのは、問題が起きてから対応することではありません。
まずは、現在の状態を知ることから始めてみませんか?

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介護施設の
「Web経営リスク診断」

あなたの法人が、情報を適切に管理できている状態なのか、それとも見えないところにリスクを抱えているのか。
簡単な質問に答えるだけで、現在の状態をチェックできます。