「伝えたはずなのに、伝わっていない」はなぜ起こる?
介護の現場では、情報共有そのものがなくなることはありません。
申し送りをしたり、連絡ノートに書いたり、担当者同士で声をかけ合ったり。
それでも、「聞いていない」「知らなかった」ということが起こります。
たとえば、ある利用者さんについて、ご家族から「次回の通院はいつもと時間が違う」と連絡があったとします。
その情報を担当者が受け取り、別の職員に口頭で伝えた。
ところが、その職員は別のシフトに入っていて、当日の担当者には伝わっていなかった。
申し送りにも書かれていなかったため、当日になって「予定が違う」と気づく。
この場合、誰か一人が大きなミスをしたわけではありません。
それでも、情報は途中で止まってしまいます。
介護施設では、勤務時間や担当が毎日変わります。
「自分が知っているから、きっと次の人も知っているだろう」と考えてしまうと、情報が人から人へ渡る途中で抜けてしまうことがあります。

「言った・言わない」を減らすには、職員の意識だけでなく、情報が途中で止まらない伝達経路をつくることが大切です。
紙の申し送りだけでは限界がある
紙の申し送りや連絡ノートは、介護現場にとって身近な情報共有の方法です。
その場ですぐ書けますし、パソコンが苦手な職員でも使いやすいというメリットがあります。
一方で、紙だからこそ起こる問題もあります。
たとえば、日中に起きた出来事を記録したものの、夜勤の職員が確認するのは数時間後。
その間に状況が変わっているかもしれません。
また、記録した場所を知らなければ、必要な情報を探すこともできません。
「この情報は申し送りノートのどこに書いてある?」
「昨日の分はどこ?」
と、情報を探すために時間を使ってしまうこともあります。
さらに、紙の記録は、その場に行かなければ確認できないという大きな特徴があります。
複数の拠点を運営している法人であれば、なおさらです。
ある事業所では紙に書き、別の事業所では別の方法で管理している。
そんな状態になると、情報共有の方法そのものが人や拠点によって変わってしまいます。
紙が悪いということではありません。
大切なのは、「何を紙で残し、何を別の方法で共有するのか」を決めておくことです。

紙をなくすことが目的ではありません。「紙で残す情報」と「デジタルで共有する情報」を整理するところから始めましょう。
「とりあえず個人LINE」が便利な理由と、その落とし穴
もう一つ、現場で使われやすいのが個人のスマートフォンです。
「今日の利用者さんの件なんですが……」
「明日の勤務、○○さんと交代になりました」
そんなちょっとした連絡を、個人LINEで済ませているケースもあるでしょう。
すぐに送れて、すぐに返事が来る。
わざわざ共有ノートを探す必要もありません。
忙しい現場ほど、「今すぐ伝えたい」という理由で、こうした方法に頼りたくなるのは自然なことです。
ただ、個人間のやり取りには、別の問題があります。
その情報を受け取った二人以外は、基本的に知ることができません。
後から別の職員が確認しようと思っても、「誰に聞けばいいのか」が分からない。
担当者が休みになれば、その情報にアクセスできない。
さらに、過去のやり取りの中に重要な情報が埋もれてしまうこともあります。
以前の記事でも、介護現場でのグループLINEが抱える情報管理上のリスクについて紹介しました。
ここで重要なのは、「LINEを使うな」ということではありません。
便利な連絡手段と、組織として残しておくべき情報を同じものとして扱わないこと。
この線引きを決めておくことが大切です。

個人LINEの便利さと、組織として情報を残すことは別の話です。
どこまでを個人間の連絡にして、どこからを組織で共有するのか、線引きを決めておきましょう。
情報共有がうまくいかない施設には「情報の置き場所」がない
情報共有の問題を考えるとき、「職員がちゃんと伝えてくれない」と考えてしまうことがあります。
でも、少し見方を変えてみると、別の原因が見えてきます。
それは、「情報をどこに置くのか」が決まっていないことです。
たとえば、
- 利用者さんの情報 → 紙
- 勤務変更の連絡 → 個人LINE
- 全体のお知らせ → 掲示板
- 業務マニュアル → 共有フォルダ
- 現場の写真 → 各自のスマートフォン
という状態になっていたらどうでしょうか。
それぞれの方法には理由があっても、職員からすると「結局、どこを見ればいいの?」となってしまいます。
情報が共有されていないのではなく、情報がいろいろな場所に散らばっているのです。
この状態になると、情報を探すことそのものが職員の負担になります。
「あの件、どこに書いてあったっけ?」
「○○さんに聞けば分かるかな?」
「前のLINEを探してみよう」
こうした小さな確認が、毎日のように発生します。
一つひとつは大した時間ではなくても、職員の人数が多くなれば、それなりの負担になります。

情報共有の問題は、「共有していない」ことよりも、「どこを見れば分かるのか」が決まっていないことにあるかもしれません。
「全部デジタル化」する必要はない
では、情報共有を改善するために、紙をやめてすべてデジタル化すればいいのでしょうか。
必ずしもそうとは限りません。
介護現場では、パソコンを使うこと自体が負担になる場面もあります。
大切なのは、「紙かデジタルか」を決めることではありません。
その情報を、誰が、いつ、どこで確認する必要があるのか。
そこから考えることです。
たとえば、その日の業務中だけ確認できればいい情報と、数ヶ月後でも確認できるように残しておきたい情報では、管理方法が違って当然です。
口頭で済ませていい連絡もあれば、記録として残しておくべき情報もあります。
職員全員に共有する必要がある情報と、担当者だけが知っていればいい情報もあります。
まずは、施設の中にある情報を一度整理してみる。
それだけでも、「実は同じ内容を紙とパソコンの両方に書いている」「誰が見るのか分からない共有フォルダがある」といった無駄に気づくことがあります。

デジタル化はあくまで手段です。まずは「誰が・いつ・どこで確認する情報なのか」を整理することから始めましょう。
「誰かが知っている」状態から「みんなが確認できる」状態へ
情報共有を見直すときに目指したいのは、「全員がすべての情報を知っている状態」ではありません。
それは現実的ではありませんし、必要でもありません。
目指したいのは、必要な人が、必要なときに、必要な情報を確認できる状態です。
そのためには、情報の種類ごとに「ここを見れば分かる」という場所を決めておくことが重要です。
たとえば、業務上の重要な申し送りはここ。
施設全体のお知らせはここ。
マニュアルや手順はここ。
現場で撮影した写真や発信に使う素材はここ。
このように情報の置き場所を決めておけば、「誰かに聞かないと分からない」という状態を少しずつ減らしていくことができます。
もちろん、最初から完璧な仕組みを作る必要はありません。
まずは、現在どんな方法で情報を共有しているのかを書き出してみる。
そして、「この情報は誰が必要としているのか」「今の方法で本当に確認できているのか」を考えてみる。
そこから始めても十分です。

目指すべきは全員の丸暗記ではなく、「ここを見れば最新の正解がわかる」場所の統一です。
情報共有の仕組みは、職員を守ることにもつながる
情報共有というと、業務を効率化するための話だと思われがちです。
もちろん、それも大切です。
でも、それだけではありません。
「言った・言わない」が減る。
「聞いていない」という不安が減る。
誰か一人に確認しなければ仕事が進まない状況が減る。
こうした変化は、職員にとっても大きな意味があります。
特に、新しく入った職員や経験の浅い職員にとって、「分からないことがあっても、どこを見ればいいのか分からない」という状態は大きな負担になります。
逆に、必要な情報が整理されていて、「まずここを確認すればいい」と分かっていれば、自分で判断できる場面も増えていきます。
情報共有の仕組みを整えることは、単に仕事を早くするためだけではありません。
職員が安心して仕事をするための環境づくりにもつながります。
まずは「情報がどこにあるか」を確認してみる
情報共有を改善しようとすると、新しいツールを導入することから考えがちです。
でも、その前にやっておきたいことがあります。
それは、今の施設で「どんな情報が、どこにあるのか」を確認することです。
申し送りは紙なのか、パソコンなのか。
勤務変更はどこで共有しているのか。
マニュアルはどこにあるのか。
現場の写真は誰が持っているのか。
過去の情報を確認したいとき、職員は誰に聞いているのか。
一つひとつ確認していくと、思っていた以上に情報が分散していることに気づくかもしれません。
新しいシステムを入れることよりも先に、今ある情報の流れを整理すること。
それだけでも、情報共有の見直しにつながります。
伝えた」ではなく「確認できる」仕組みへ
介護施設では、毎日たくさんの情報が発生します。
そのすべてを一つの方法で管理する必要はありません。紙、口頭、スマートフォン、パソコン。それぞれに向いている使い方があります。
問題になるのは、それらを場当たり的に使い分けてしまい、「どこに何があるのか」が分からなくなってしまうことです。
「伝えたから大丈夫」ではなく、「必要な人が、必要なときに確認できる」。
そんな状態をつくることが、介護施設の情報共有では重要です。
まずは、施設の中でどんな情報が、どこに保存され、誰が管理しているのかを一度整理してみてはいかがでしょうか。
「実はこの情報、○○さんしか分からない」
「この資料、どこにあるのか誰も知らない」
「同じ内容をいくつもの場所に書いている」
そんな発見があれば、そこが情報共有を見直す最初のポイントになります。
そして、こうした「情報が人に偏っている」「どこにあるのか分からない」という状態は、日々の業務だけでなく、ホームページやドメイン、サーバーなどのWeb資産を管理するときにも起こります。
- 担当者が変わったときにログイン情報が分からない。
- ホームページの更新方法を知っている人が一人しかいない。
- 求人情報や施設の情報が、Web上で古いままになっている。
こうした状態を放置していると、いざというときに対応できなかったり、施設の情報発信そのものが止まってしまったりする可能性があります。
「うちの施設は大丈夫かな?」と思った方は、一度Webまわりの管理体制も確認してみてください。
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ホームページやドメイン・サーバーの管理、情報発信の体制など、介護施設が抱えやすいWeb上のリスクを、
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