「手書き→PC打ち直し」現場で起きている二重入力のリアル
介護現場では、次のような「同じ情報を何度も入力する」作業が発生することがあります。
- ケア直後に手書きしたメモを、あとから介護記録ソフトへ入力する
- 介護記録ソフトに入力した内容を、業務日誌や申し送りノートへ転記する
- 既存の記録をもとに、必要な様式や報告書へ改めて入力する
もちろん、それぞれに必要な理由がある場合もあります。
現場では「その場ですぐ記録するために紙を使う」「事務所で正式な記録を残す」など、業務上の都合から複数の記録方法を使い分けていることも少なくありません。
問題なのは、同じ情報を扱うために、職員が何度も入力し直している状態です。
一回の転記は数分でも、それが毎日、複数の職員によって繰り返されれば、決して小さな負担ではありません。
また、共有PCを使っている施設では、入力のためにPCの順番待ちが発生し、別の業務まで滞ってしまうこともあります。

「紙を使っていること」そのものが問題なのではありません。
大切なのは、同じ情報を何度も書き写す必要がある状態になっていないかを見直すことです。
なぜ二重入力はなくならないのか?現場にある3つの壁
「二重入力を減らしたい」と思っていても、簡単にはなくならないのには理由があります。
①「その場で入力できない」という壁
ケアの最中にPCへ向かうことが難しい場合、まずは手元の紙にメモを取るほうが現実的です。
「あとでまとめて入力すればいい」と考えて始めた作業が、そのまま二重入力につながってしまいます。
②「システムがつながっていない」という壁
介護記録、勤怠、請求、申し送りなど、業務ごとに異なるシステムや書式を使っていると、一つの情報を別の場所へ移し替える必要が出てきます。
それぞれのシステムに役割があるからこそ、「一つにまとめればいい」と簡単にはいかないのが現実です。
③「紙にも残しておきたい」という壁
「PCに入れたから紙は不要」と思っていても、
「本当に入力されているか分からない」
「あとからすぐ確認できるようにしておきたい」
「他の職員が見るには紙のほうが分かりやすい」
といった理由から、紙を残しているケースもあります。
つまり、二重入力は「デジタル化すればなくなる」という単純な問題ではありません。
なぜ紙を使っているのか、なぜ別の場所にも入力しているのか。そこまで含めて考える必要があります。

「紙をなくす」から始めるのではなく、「なぜ二重に記録しているのか」を確認することから始めましょう。
「小さな数分」が積み重なる、目に見えないコスト
二重入力の厄介なところは、目立った問題として認識されにくいことです。
一回の転記に5分、10分かかっていたとしても、「これくらいなら仕方ない」と思ってしまうかもしれません。
しかし、毎日の業務として考えると、その時間は積み重なっていきます。
たとえば、1人あたり1日15分の入力作業が発生していて、それを20人の職員が行っているとします。
単純計算すると、年間では約1,800時間相当です。
「数分の作業だから」と見過ごしている裏で、これだけの時間が日々の入力作業に使われていることになります。
もちろん実際には勤務日数や職員ごとの業務内容によって変わりますが、二重入力は「数分の作業」と片付けられない規模になることがあります。
さらに、二重入力によって生まれるコストは、時間だけではありません。
転記ミス・入力漏れ
手書きの内容をPCへ入力し直す、さらに別の書類へ転記する……。
作業回数が増えれば、それだけ入力ミスや転記漏れが起きる可能性も高くなります。
手戻りの発生
「この情報、どこに入力したっけ?」と確認する時間や、入力内容の修正など、本来必要のなかった作業が発生することもあります。
職員の徒労感
同じことを何度も入力する作業は、「なぜ同じことを繰り返しているんだろう」という徒労感にもつながります。
一つひとつは小さなムダでも、毎日の業務に組み込まれてしまえば、職員の時間を継続的に奪うことになります。

業務改善では、「大きなムダ」だけでなく、毎日繰り返している小さな作業にも目を向けることが大切です。
いきなりペーパーレスを目指さない。「二重入力」を解体する3ステップ
では、実際に二重入力を減らしていくには、何から始めればよいのでしょうか。
いきなり「紙をなくそう」「新しいシステムを導入しよう」と考える必要はありません。
まずは、現在の業務を整理するところから始めてみましょう。
STEP 1|「どこからどこへ」転記しているかを書き出す
まずは、日常業務の中で同じ情報を何度も入力している場所を洗い出します。
たとえば、
現場メモ → 介護記録ソフト → 申し送りノート
という流れがあれば、まずはその流れをそのまま書き出します。
「誰が入力しているか」「いつ入力しているか」まで整理すると、どこに負担が集中しているのかも見えてきます。
STEP 2|「最初の入力」を見直す
次に、その情報を最初に入力する場所を見直します。
もしタブレットやスマートフォンなどで、現場から直接正式な記録を入力できるのであれば、「紙にメモしてあとで入力する」という工程自体を減らせる可能性があります。
ただし、すべての業務を無理にデジタルへ置き換える必要はありません。
紙のほうが適している業務があるなら、紙を残すことも選択肢の一つです。
大切なのは、「紙かデジタルか」ではなく、同じ情報を何度も入力する必要がない状態をつくることです。
STEP 3|「どこを見れば分かるか」を決める
最後に、その情報の「正しい状態」をどこで確認できるのかを決めます。
たとえば、「正式な記録は介護記録ソフトを見る」「当日の申し送りはこの場所を見る」など、情報ごとに確認先を明確にします。
これだけでも、「念のためこっちにも書いておこう」という重複が減ることがあります。

目指したいのは、すべてをデジタル化することではありません。
「この情報は、ここを見れば最新の状態が分かる」という状態をつくることです。
「情報の分断」は、Webにも起こる
ここまで、介護現場で起きる「情報の分断」について見てきました。
実は、こうした「情報の分断」は、法人のWeb運用でも起こります。
たとえば、
- 求人票には「未経験歓迎」と書いてあるが、ホームページにはその情報がない
- 事業所の移転後も、古い住所がWeb上に残っている
- サービス内容が変わったのに、ホームページの情報が更新されていない
- Webサイトの管理を誰が担当しているのか分からない
- ドメインやサーバーの情報が、特定の担当者しか把握していない
こうした状態も、「情報がそれぞれの場所に分かれている」「どれが最新の情報なのか分からない」という意味では、現場の二重入力と共通する部分があります。
介護記録であれば「どこを見れば最新の情報が分かるのか」が重要でした。
Webについても同じです。
「どの情報が正しいのか」「誰が管理するのか」「どこを更新すれば反映されるのか」
が整理されていなければ、担当者が変わったときや、事業所を増やしたときに、情報の更新や引き継ぎが難しくなります。
そして、Web上の情報が実際の施設やサービスの状況とずれていれば、利用者のご家族や求職者が、現在の施設の姿を正しく把握できない可能性もあります。

「情報がどこにあるか」「どれが最新なのか」「誰が管理するのか」を決めることは、日々の業務だけでなく、法人のWeb資産を守るうえでも重要です。
入力を減らす」ことは、現場と法人の時間を守ること
介護現場の二重入力は、「IT化が進んでいないから起こる問題」とは限りません。
紙を使う理由、複数のシステムを使う理由、それぞれの業務に必要な役割があります。
だからこそ、まず見直したいのは、
- 同じ情報を何度入力しているか
- どこで情報が分断されているか
- どこを見れば最新の情報が分かるのか
- 誰がその情報を管理しているのか
という、現在の情報の流れです。
二重入力を減らすことは、単に「入力時間を短くする」という話ではありません。
職員が本来の業務に使える時間を増やし、情報の行き違いや手戻りを減らすことにもつながります。
そして、こうした「情報の流れを整理する」という視点は、介護現場だけでなく、法人のWeb運用を見直す際にも役立ちます。
ホームページやドメイン、サーバー、各種アカウントなど、法人が持つWeb資産についても、「誰が管理しているのか」「どこに情報があるのか」「今の状態はどうなっているのか」を一度整理してみてはいかがでしょうか。
あなたの法人は大丈夫?「介護施設のWeb経営リスク」をチェック
ホームページの管理や情報更新、ドメイン・サーバーなどのWeb資産。
普段は問題なく使えていても、担当者の退職や事業所の拡大などをきっかけに、管理上のリスクが表面化することがあります。
まずは、自社のWeb運用にどのようなリスクがあるのか、簡単な診断でチェックしてみてください。