介護施設の写真は、どこまで個人情報にあたる?
まず押さえておきたいのが、写真に写っている人を識別できる場合、その写真は個人情報にあたるということです。
個人情報保護委員会も、介護施設の利用者の写真をホームページや機関誌に掲載する場合、本人の同意が必要であると案内しています。
※参考:[個人情報保護委員会「ホームページや機関誌に、行事などにおける利用者の写真を掲載する場合、本人の同意を得る必要はありますか」]
たとえば、次のような写真を考えてみましょう。
- レクリエーションに参加している利用者の写真
- 職員と利用者が一緒に写っている写真
- 季節の行事やイベントの集合写真
- 施設内で日常を過ごしている様子を撮影した写真
施設の雰囲気を伝える写真であっても、利用者本人が分かる状態であれば、自由に公開してよいわけではありません。
また、顔がはっきり写っていなければ必ず問題ない、というわけでもありません。名札や名前の表示、周囲の状況などから個人が分かる場合もあるためです。

写真を公開する前に、まずは「誰が写っているか分かるか」を確認しましょう。
顔が写っているかどうかだけで判断せず、写真全体から個人を識別できないかを見ることが大切です。
「掲載の許可をもらったから大丈夫」とは限らない
利用者の写真を掲載する際には、本人の同意を得ることが重要です。ただし、同意を得ていることだけで、あらゆる写真を自由に掲載できるわけではありません。
確認しておきたいのは、何のために、どこで、どのように写真を使うことについて同意を得ているかという点です。
たとえば、施設内で写真を掲示することと、インターネット上のホームページに掲載することでは、写真を見る人の範囲が異なります。
また、ホームページへの掲載に同意を得ていても、SNSや広告など、別の媒体への掲載まで当然に認められているとは限りません。
写真の利用については、次のような点を整理しておくと安心です。
- 掲載する媒体 : ホームページ、SNS、パンフレットなど
- 利用する目的 : 施設紹介、行事報告、採用広報など
- 掲載する写真の範囲 : 顔が分かる写真、集合写真など
- 掲載期間や取り下げへの対応 : 掲載を終了したい場合の連絡先や対応方法
実際の同意の取り方や必要な手続きは、写真の使い方や状況によって異なります。施設の個人情報保護方針や同意書の内容を確認し、必要に応じて見直しましょう。

「写真の掲載に同意しているか」だけでなく、「今回の使い方も同意の範囲に含まれているか」を確認することが大切です。
以前の同意をそのまま使い続けるのではなく、掲載する媒体や目的に合っているかを見直しましょう。
顔が写っていなくても注意したい、写真・動画の情報
写真や動画を公開するときは、利用者の顔だけを確認すればよいわけではありません。
撮影した側が気づいていなくても、背景や音声に個人情報が含まれていることがあります。
背景に個人情報が写り込んでいないか
たとえば、施設内で撮影した写真の背景に、次のようなものが写っていないでしょうか。
- 利用者の名前が書かれた名札や掲示物
- 個人の記録や書類、ホワイトボード
- 個人名が表示されたパソコンやタブレットの画面
- 居室の名前表示や個人を特定できる情報
写真の主役が職員や施設の設備であっても、背景に写った情報から利用者を特定できてしまう可能性があります。
公開する写真は、主役だけでなく、画面全体を確認する習慣をつけましょう。
動画の音声にも気を配る
動画の場合は、映像だけでなく音声にも注意が必要です。
撮影中に利用者の名前が呼ばれていたり、個別の相談や健康状態について話している声が入っていたりすることがあります。
また、カメラを止めたつもりでも録画が続いているなど、撮影時の操作ミスが起きる可能性もあります。
動画を公開する前には、映像を一度見るだけでなく、音声も含めて最初から最後まで確認しましょう。不要な部分を編集するだけでなく、公開してよい内容かどうかを判断することも必要です。
写真の位置情報や撮影データも確認する
写真ファイルには、撮影日時や位置情報などのデータが含まれている場合があります。
すべての写真に位置情報が含まれているわけではありませんが、公開する画像の取り扱いによっては、意図しない情報が残る可能性もあります。
ホームページに掲載する画像については、使用するシステムや画像編集ソフトの設定も確認し、必要に応じて位置情報などの不要なデータを削除しましょう。

写真や動画は、見た目だけで安全性を判断できません。
背景・音声・ファイルに付随する情報まで確認することで、公開時の見落としを減らせます。
写真を公開する前に確認したい4つのポイント
ここまで紹介した内容を踏まえ、写真や動画を公開する前に確認したいポイントを整理してみましょう。
① 掲載することへの同意が確認できているか
写真に写っている利用者を識別できる場合は、本人の同意を確認しましょう。
本人による意思表示が難しい場合などは、本人の状況や適用されるルールを踏まえ、適切な対応を検討する必要があります。家族であれば誰でも当然に同意できる、というわけではないため、施設のルールや関係するガイダンスに沿って確認しましょう。
② 同意の範囲と掲載目的が合っているか
ホームページへの掲載なのか、SNSへの投稿なのか。施設紹介なのか、採用広報なのか。
掲載する媒体や目的が、確認した同意の範囲に含まれているかをチェックします。
③ 写り込みや音声に問題がないか
写真の背景に名前や書類が写っていないか、動画に個人情報を含む音声が入っていないかを確認します。
必要に応じてトリミングやぼかし、音声の編集などを行います。ただし、加工すれば必ず安全になるわけではないため、公開そのものが適切かどうかも判断しましょう。
④ 公開前に誰が確認するか決まっているか
撮影した人がそのまま公開するのか、Web担当者が確認するのか、施設長などの責任者が最終確認するのか。
担当者によって判断が変わらないよう、確認する人と手順を決めておきましょう。

すべての写真について、その都度ゼロから判断する必要はありません。
掲載前に確認する項目と担当者を決めておけば、確認漏れを防ぎながら、無理なく情報発信を続けやすくなります。
写真の扱いを「担当者任せ」にしないために
ここまで読んで、「確認することが多くて大変そう」と感じた方もいるかもしれません。
特に、ホームページの更新を一人の職員が担当している施設では、写真の選定から掲載内容の確認、公開作業までを一人で担っていることもあるでしょう。
しかし、写真の公開に関する判断をすべて担当者個人に任せるのは、負担が大きいだけでなく、施設としての管理体制にも課題が残ります。
たとえば、次のようなルールを整えておくと、担当者だけに負担が集中するのを防ぎやすくなります。
- 写真の保管場所を決める : 公開前の写真と、公開可能な写真を区別する
- 同意の確認方法を決める : どの写真について、どの範囲の同意が確認できているかを管理する
- 公開前の確認担当を決める : 誰が確認し、誰が公開するのかを明確にする
- 掲載後の対応方法を決める : 取り下げの依頼や掲載内容の変更があった場合の手順を整理する
大切なのは、複雑な管理表やマニュアルを最初から完璧につくることではありません。
まずは、写真を撮影してからホームページに掲載するまでの流れを確認し、誰がどの段階で何を確認するのかを整理することから始めてみましょう。
写真の扱いに限らず、Webサイトの更新や管理が特定の職員に集中している場合は、担当者が変わったときに同じ手順を引き継げるかどうかも確認しておきたいところです。
安心して情報発信を続けるために、Webの管理体制も見直そう
介護施設にとって、ホームページやSNSで日々の様子を発信することは、施設の雰囲気や取り組みを知ってもらう機会になります。
だからこそ、写真や動画を使わないようにするのではなく、安心して公開できる仕組みを整えることが大切です。
そのためには、写真の掲載ルールだけでなく、Web運営全体の管理体制も確認しておきましょう。
たとえば、
- 写真の掲載可否を誰が判断するのか決まっていない
- 同意の確認記録や公開可能な写真の保管場所が分からない
- ホームページの更新担当者しか管理画面に入れない
- 担当者が変わると、写真の掲載ルールや更新手順が分からなくなる
こうした状態では、担当者が変わったときに確認方法が分からなくなったり、掲載ルールが引き継がれなかったりする可能性があります。
写真を安全に公開することも、ホームページを継続して運用することも、個人の注意力だけに頼るのではなく、組織として管理できる状態を目指したいところです。
写真を活用するなら、公開するためのルールも整えよう
介護施設の写真や動画は、施設の雰囲気や日常を伝えるための大切な情報です。
一方で、公開の仕方によっては、利用者のプライバシーや個人情報に関わる問題につながる可能性があります。
公開前には、次のポイントを確認しましょう。
- 写真に写っている人の同意が確認できているか
- 同意の範囲と掲載する媒体・目的が合っているか
- 背景や音声に個人情報が含まれていないか
- 公開前の確認担当と手順が決まっているか
- 写真や同意の記録を、担当者が変わっても引き継げるか
写真を使った情報発信を続けるためには、担当者一人の注意に頼るのではなく、施設全体で確認できる仕組みを整えることが大切です。
まずは、現在の写真の保管場所や掲載前の確認手順を、一度見直してみてはいかがでしょうか。
あなたの施設は大丈夫?3分でできる「介護施設のWeb経営リスク診断」
写真や動画の掲載ルールだけでなく、ホームページの管理体制や情報の引き継ぎまで、今の状態を確認してみませんか?
- Webサイトの管理情報が、特定の職員に集中している
- 写真や掲載内容を、誰が確認するのか決まっていない
- Webに関する情報やルールの保管場所が分からない
- 担当者が変わると、ホームページの更新や管理が止まりそう
ひとつでも心当たりがあれば、Web運営の管理体制を見直すきっかけになるかもしれません。